【作詞講座vol.6】作詞をしよう

みなさんこんにちは。田中守です。

さぁ、今回はいよいよ作詞にチャレンジです。
長い道のりでしたね。ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。

何度も書きましたが、素人が一番やってしまうミスは

「自分の気持ちを歌詞にしてしまう。」

という事です。

ですが今までのレッスンで皆さんは客観的にタイトルやら設定を考えたと思います。

そこが本当に大事なのです。

小説だって漫画だってそうですよね?
プロの方たちは「これなら読者に喜んでもらえる」というのを基本に皆さん創作されているのです。

最初がしんどかった分作詞自体はとてもやりやすいと思います!
頑張りましょう。

まず作詞の構成についてのお勉強です。

4コマ漫画の世界ではよく起承転結と言われていますよね?

: 主人公の置かれている状態、劇の説明
: 主人公の置かれている状態にある事件が起こり、これから段々劇が展開して行く過程
: 一つの劇のヤマ場で結果に赴く為の転化
: 承、即ち事件とそれによって起こった転化によって出された結果

との事なのですが、作詞の世界では次のようになります。

: Aメロ及びA”メロ。主人公の置かれている状態、劇の説明
: Bメロ。Aメロに対しての主人公の気持ちの吐露
: サビ。タイトルについての説明 ABメロとの関係性の説明

以上です。
「結」は不必要です。
むしろ「結でしめない事で視聴者に余韻を与え共感を得る」作戦です。

でも前回の作詞講座では「グラジオラスのように私も強くならなくちゃ」結まで設定を作ったじゃない

と思う方もいるかと思います。

設定自体は細かく起承転結まで作っても(むしろ作った方が)良いのです。

大事なのは「内容を全て歌詞に書ききらない」という事です。

なんだか時々主人公はちゃんと自分じゃない誰かにしているのにそこしか考えてないで書き始めてしまい内容が破綻している歌詞をこの業界でもお見掛けしますが、本当に読んでて恥ずかしいです。

細かい設定を書ききらないのと何も考えなかったから書ききれなかったというのは

「笑わせたがり」「笑われ者」くらいの差があります。

似ているようで全然違います。なのできっと読者の方は大丈夫でしょう。

こんだけ口うるさく書いたのですから。

それでは前回の設定をもう一度見てみましょう。

彩木美来。19歳。初めての恋人が出来ました。
内気な私には不似合いな明るくてお調子者の彼氏です。
彼の冗談にもはにかむのが精一杯だったけど、好きでした。
でも振られてしまいました。理由はよくわかりません。

今日は久しぶりの外出。もちろん独りぼっちです。。
突然の夕立に雨宿りをしていたら、余計に一人でいるって実感してしまいます。
こんな時にあなたがいたら、きっとずっと隣で冗談を言ってくれてたはずだもの。

雨上がりに街を歩いていると綺麗なグラジオラスが咲いていました。
キラキラと輝いてまるで硝子のようにきれい。
でも、涙のようにも見えます。まるで私の今の気持ちの様…。

でも、この花は強い雨に打たれてもこんなにけなげに咲き誇ってるじゃない。
私も強くならないと。

これは私が彩木美来ちゃんのパブリックイメージをテーマに作った細かい設定です。
正直言ってそこまで共感はしないですよね?
どちらかというと「美来ストーリーを見せられてる感」が強いかと思います。

当然私が美来仕様に作った内容なので当たり前ですが、
作詞で大切なのは「共感」です。
それではどうすればいいかとなると

「歌手のためだけに考えた設定をはしょる」

こちらになります。
よくわからないという方もいるかと思いますので、実際にやってみましょう。

彩木美来。19歳。初めての恋人が出来ました。
内気な私には不似合いな明るくてお調子者の彼氏です。
彼の冗談にもはにかむのが精一杯だったけど、好きでした。
でも振られてしまいました。理由はよくわかりません。

今日は久しぶりの外出。もちろん独りぼっちです。。
突然の夕立に雨宿りをしていたら、余計に一人でいるって実感してしまいます。
こんな時にあなたがいたら、きっとずっと隣で冗談を言ってくれてたはずだもの。

雨上がりに街を歩いていると綺麗なグラジオラスが咲いていました。
キラキラと輝いてまるで硝子のようにきれい。
でも、涙のようにも見えます。まるで私の今の気持ちの様…。

でも、この花は強い雨に打たれてもこんなにけなげに咲き誇ってるじゃない。
私も強くならないと。

できる限りストーリー展開を壊さないようにはしょってみました。。
美来要素の高い設定を文面から消す事によって意味的にも通じ、かつ内容に余白が生まれましたかと思います。

この余白によって視聴者が自分の都合の良いように足りない部分を勝手に補ってくれるのです。

映画と小説の違いというのは当然
決まった絵面を見せられているか、その絵面を自分で考えるかの差だと思っています。
歌詞というのは当然、後者ですよね。
それでは小説と歌詞の大きな違いは何か。

個人的には求められているのが結果かどうかという点だと思っています。

小説というのは当然ちゃんと物語として結果を提示している作品がメインだと思っています。
読者もそれを期待して読んでいるので、当然と言えば当然です。

ところが結果を書ききっている歌詞ってそこまで多くないと思いませんか?
よく歌詞って最後に1番のサビを繰り返すじゃないですか。

※繰り返し

とか書いてある。

あれです。

結果を求められていないので一番サビを最後に持ってきても通用する世界なのです。
手抜きではないんです。意味があっての※繰り返しなのです。

だいたい結果まできちんと書ききっている歌詞って中原めいこの「やきもちやきルンバ・ボーイ」ソフトクリーム「クラスメイト失踪事件」しか思い浮かびません。まぁソフトクリームに限ってはこれはアイドルソングという名の推理モノですからね。犯人が分からないとこっちも気になるので仕方ありません。


※衝撃の結末に皆様ご注目

それでは先ほどはしょった文章をもう一度見てみましょう。
まず、実際の設定の「明るくて無邪気な彼氏」という存在。
ここまで歌詞に書ききってしまうと「明るくて無邪気な人ってあたしはあんまり…大人ぽい人がいいな」という視聴者もいるかとおもいます。

普段の私なら「高望みをしてるからお前はモテないんだ。」と一蹴してやる所ですが大事な視聴者様ですから言えるはずもありません。

そんな視聴者のために「私には不似合いな彼氏です」とまで言葉を減らしたらどうでしょう。

私には不似合いな「明るくて無邪気な彼氏」
私には不似合いな「大人っぽくて無口な彼氏」
私には不似合いな「優しくて私のわがままにも笑顔でこたえてくれる彼氏」

なんでもござれです。

勝手に視聴者が足りない部分は埋めてくれます。

こういう小手先のマジックを多用して詞を作っていきます。

メロディというのは基本的には

Aメロ
A”メロ
Bメロ
サビ

という展開です。

Bメロ抜き等もたくさんありますが、アイドルソングの基本としてはこの展開で覚えてしまって構いません。

Aメロは曲始まりなのでそこそこの綺麗なメロディを持ってきて
だいたいの曲がBメロでイメージを変えてますよね?(PPPFとかいうあれです。)
そしてサビで転調やら最高音を持ってきて持って曲の印象を視聴者に与えるかと思います。

基本とはなるのでまずはこの流れを覚えて歌詞にあてはめましょう。。

Aメロ…起承転の起部分。

当然つかみなので一行目がかなり重要です。
Aメロで主人公のおかれている立場等を書いてしまうと後がやりやすいです。

Bメロ…俗にいうPPPFの場所。

ここは曲調的には大人しめな感じに移行しがちなので歌詞もそこまで派手にしないように心がけます。
主人公の気持ち等を書くとやりやすいでしょう。文字数は少なめになります。

サビ…当然一番キャッチ―にしなければならない部分。

後述のサビあるあるを多用して覚えやすくもインパクトのある歌詞を。特にサビに関しては視聴者は歌詞とメロディ両方を一緒に記憶します。
メロディに乗ることを前提に印象的な言葉を使うが必須です。

そして歌詞は当然文字数に制限があります。

ですが最初から文字数まで合わせる練習をしてしまうとかなり大変なのでこのあたりも踏まえつつ適当に作っていきましょう。

それでは早速やってみましょう。

まずはタイトルを歌詞カードのごとくクレジット込みで書いてみましょう。
作曲は自分でもかまいませんし、好きな作曲家でもかまいません。

硝子のグラジオラス

作詞:田中守 作曲・編曲:後藤次利

いいですねぇ。
これだけでもうプロになった気分です。
私レベルになると、もうこのクレジットを見ただけで
どんな曲なのかも想像できます。
おそらく後藤先生あまりやる気のな…

さぁ。ここまで書いたらいよいよ書き出します。まずはAメロを始めましょう。
現状は文字数など気にしないで好きなように書いて下さい。

突然の夕立に 雨宿りの夕暮れ
一人ぼっちが心に痛い

こんな感じですかね。30秒で書きました。
とりあえず、はしょれる所は全て排除できていますよね?
そしてAメロで主人公のおかれた状況も書けてますよね?
オッケーです。

…と言いたい所ですが、少し問題点があります。どこだからわかりますか?

正解は

突然の立に 雨宿りの暮れ

です。
「夕」の字が二回出てきていますよね。これは問題です。
基本的に、一番と二番の同じ個所ならこの韻の踏み方は問題ないのですが、
しょっぱなから違う意味で同じような響きの言葉が出てきてしまうのは少し問題です。
それではどうすればいいか、文字を差し替えるだけで大丈夫です。
突然の夕立というのは状況説明ですので、個人的にはあまり変えたくないのです。
変えるなら夕暮れの方でしょう。時間の説明より、曜日設定で行きましょうかね。

突然の夕立に 雨宿りの土曜日
一人ぼっちが心に痛い

こんなのはどうでしょう。最初は時間の説明だったのですが、日にちの説明にしてみました。
土曜日だったら普通なら休日か午後休ですよね。彼氏との関係も表現できそうだしこれで行きましょう。
さぁ続いてA”メロです。当然Aメロと同じになるので(最後だけ変える場合が多い)先ほど作ったAメロと「同じ文字数で」続きを書いてみましょう。

ただし、±1くらいはメロディでどうにでもなります。完全に合わせる必要はありません。

隣にいつもいた あなたの優しさを
何故こんな時 思い出してる

最初のAメロで自分の現在の状況を書きA”で初めて彼氏らしき存在をにおわせてみました。
「何故こんな時思い出してる」って当然作ったの私なので知ってますけど、
A”ですからね。このあたりで止めておくのがよいでしょう。

さぁ、ここまで見返してます。
今まで作った設定と食い違いはないですよね?
でも細かい設定は書ききってないですよね?
問題なさそうなら続きを書きましょう。

そういえば「あなた」の事とはどうなってるかを書いてませんよね。
本来であれば明るくて無邪気な彼氏から振られたという細かい設定があるのですが
あくまでその設定を前提として、美来ちゃんの気持ちを書いてみましょう。

あの日 さよならを
告げたあの顔は
とても悲しかったけど

適当に書いててなんですけど、なんか新情報でましたね。
さよならを告げたあの顔が悲しげだった…?
私も初耳でしたけど、まぁ、歌詞を書いているときは私はわりと憑依型なので
きっと美来ちゃんの気持ちなのでしょう。
とりあえず、破綻はしてないのでそのまま続けてみましょう。
いよいよサビです。

それではサビを書く前に

サビあるあるの発表です!

タイトルがサビ頭にくる
サビ頭にタイトルがこない場合はサビ終わりにタイトルが来る
もっとを使いたがる
そっとを使いたがる
ずっとを使いたがる
きっとを使いたがる

これです。とくにもっとそっとずっときっとは個人的に「困った時のモソズキ」と呼んでいるくらい色々な曲のサビに出てきます。
それではあるあるだから歌詞に使用してはダメか?となると答えはNOです。
困った時にはとりあえず「きっと」「ずっと」を付け加えておけば一気に歌詞っぽくなります。

是非多用しましょう。

そしてアイドルソング限定なのですが、やたらサビ頭かサビ終わりにタイトルをもってきます。

こちらもガンガン使いましょう。

むしろ慣れるまではサビにタイトルもってこいと言いたいくらいです。
それでは早速サビも作ってみましょう

気を付ける点は「サビは二回繰り返す」という点です。
「サビ頭タイトルパターン」では慣れるまでは二回とも同じにした方が良いでしょう。

硝子のグラジオラス
濡れてる花びらが
涙みたいにほら光ってる
硝子のグラジオラス
慰めるみたいに
それでも咲いてる
心のグラジオラス

こんな感じでしょうかね。
なんか結局、状況説明もろくに書ききってないうちにサビまで来てしまい、
サビあるあるのとりあえずタイトルをサビ頭にもってきてしまったので
なんだかめちゃくちゃ強引ですよね。
初見の方には「なに?唐突に登場したグラジオラスは」って思われるかもしれませんが

それはないです。

むしろ視聴者にはすっと入ってくれるはずです。

私たち、とりあえず設定自体は事細かに考えましたよね?
そして破綻してない歌詞になってますよね?
はしょりすぎただけですよね?

だからです。

そもそもタイトルありきですべての設定を考えたわけなので歌詞的には唐突に登場した感はありますが、特に問題ありません。

とりあえず、雨の状況もAメロで書いているし、サビにも「濡れてる花びら」と
先ほどの夕立と何やら関連性のある言葉も出てきますしね。

何も考えずに書いたであろう「内容が破綻している系歌詞」とは違いますよね?
言葉は足りませんけど意味は通ってます。

しかし我ながらよくわからないのが最後の「心のグラジオラス」
「とりあえず私もグラジオラスみたいに強くならなくちゃ」的な事を書く前にサビ終わりに来てしまったので本気で強引に締めたのですけど、これはこれで

「よくわからないけど、なんか伝わる」感

でてません?

よしとします。

それでは硝子のグラジオラスの一番を改めて読んでみましょう。

硝子のグラジオラス

作詞:田中守 作曲・編曲:後藤次利

突然の夕立に
雨宿りの土曜日
一人ぼっちが心に痛い
隣にいつもいた
あなたの優しさを
何故こんな時 思い出してる

あの日 さよならを
告げたあの顔は
とても悲しかったけど

硝子のグラジオラス
濡れてる花びらが
涙みたいにほら光ってる
硝子のグラジオラス
それでも咲いてる
慰めるみたいに
心のグラジオラス

さぁできました。問題はなさそうですよね。
純情ぽさも出ているし。

この調子で二番を考えてみましょう。
慣れるまでは二番は一番の補足説明で良いと思います。

二番の展開はA”Bサビの流れで良いと思います。Aは消します。

それではやってみましょう。

あんなに好きだった
その日は戻らない
もう一度だけ もしも会えたら

あの日 さよならへ
うつむいただけね
もう知っていたくせに

硝子のグラジオラス
泣いてる花びらが
私の気持ちほら気づいてる
硝子のグラジオラス
まっすぐに咲いてる
優しく微笑んで
心のグラジオラス

こんな感じですかね。
とりあえずよくわからないのですが、どうも美来ちゃんは失恋の痛手により正気を失いグラジオラスを擬人化したようです。
でもね、こんなもんなんですよほんとに。
少し無茶なくらいの方が歌詞としてしっかり入ってきます。
だって別にこれは歌詞なんだと言われればそんな変じゃないでしょ?

実際グラジオラスを擬人化する人なんて目の前にいたらさすがの私でもドン引きしてしまいますけども。

それでは一番のサビをもう一度最後にくっつけて
いよいよ歌詞の完成です!

硝子のグラジオラス

作詞:田中守 作曲・編曲:後藤次利

突然の夕立に
雨宿りの土曜日
一人ぼっちが心に痛い
隣にいつもいた
あなたの優しさを
何故こんな時 思い出してる

あの日 さよならを
告げたあの顔は
とても悲しかったけど

硝子のグラジオラス
濡れてる花びらが
涙みたいにほら光ってる
硝子のグラジオラス
それでも咲いてる
慰めるみたいに
心のグラジオラス

あんなに好きだった
その日は戻らない
もう一度だけ もしも会えたら

あの日 さよならへ
うつむいただけね
もう知っていたくせに

硝子のグラジオラス
泣いてる花びらが
私の気持ちほら気づいてる
硝子のグラジオラス
まっすぐに咲いてる
優しく微笑んで
心のグラジオラス

硝子のグラジオラス
濡れてる花びらが
涙みたいにほら光ってる
硝子のグラジオラス
それでも咲いてる
慰めるみたいに
心のグラジオラス

本当に15分くらいで書いた歌詞なんですけど、
多分それなりに視聴者のハートはそれなりにつかめる気がします。

設定はあくまで美来ちゃん本人なわけなので、しっかりとファンへの清純アピールに成功し、かつ、内容を書ききってないので不特定多数の視聴者への共感も得られるんじゃないかと思っています。

設定さえしっかりしておけば作詞自体は、簡単でしょ?

今回はここまで。次回は今回の歌詞で使用した小手先の言葉遣いについてです。

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